免疫細胞が暴走して自分自身を傷つけてしまうことによる病気はたくさんあります。
円形脱毛症も免疫細胞が誤って毛根を攻撃してしまうのが主な原因だと考えられています。
イーライリリー社のオルミエントは、免疫抑制剤として、日本では2017年に関節リウマチの薬として承認されました。
その後2020年にはアトピー性皮膚炎(難治)に適応になり、2021年にはコロナ(中〜重度、免疫の暴走が起こった段階で使う)、そして2022年には円形脱毛症(広範囲で難治)に適応になりました。
いずれの場合も重度や難治の場合に限ります。

必死に敵と戦っているつもりの免疫細胞が、気がつくと味方(体)を攻撃しているなんて。

興奮状態の免疫細胞をなだめるのが免疫抑制剤。
円形脱毛症でオルミエントが使える場合
すべてを満たす必要があります。患者さんの条件だけではなく、医療施設側の条件もあります。
どこの皮膚科医院でも処方されるわけではありません。
医薬品医療総合機構から最適使用促進ガイドラインが出されています。
一定の基準を満たしていない医療施設では使用できないことがわかります。
http://alopecia.bigiyak.com/2024/02/27/オルミエントが使用できる施設の条件/
オルミエントが使えない患者さん(禁忌)

最初の投与の前には必ずX線検査や血液検査で、この薬が使えるかどうかをチェックされます。
投与後にも、副作用が出ていないか、定期的に検査があります。
オルミエントと相互作用のある薬(併用注意)
プロベネシド(ベネシッド)‥オルミエントの血中濃度を上昇させる可能性あり。
オルミエントは薬の飲み合わせに関してはほぼ気にする必要はなく、添付文書では尿酸の薬であるプロベネシド(ベネシッド)だけが併用注意になっています。併用禁忌の薬はありません。
オルミエントの副作用
重大な副作用としては
- 感染症(帯状疱疹、肺炎、敗血症、結核など)
- 消化管穿孔
- 好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少
- 肝機能障害、黄疸
- 間質性肺炎
- 静脈血栓塞栓症
その他の副作用では、悪心、腹痛、軽めの感染症(上気道感染症やヘルペスなど)、ざ瘡、LDLコレステロールの上昇などがあります。

患者さんたちの話を聞くと、副作用では帯状疱疹やヘルペスが多い気がします。ほとんどの方は特に問題なく継続されているようです。
円形脱毛症へのオルミエントの使い方
4mgを1日1回服用。患者さんの状態に応じて2mgに減量すること。36週後も治療効果が見られない場合は、投与中止を考慮する。
食前食後関係なく、いつ飲んでもOK!ですが大体同じ時間帯に飲むようにします。だいたい9ヶ月後に続けるかどうかの判定をされます。
オルミエントで注意しなければならないことは、「円形脱毛症を根本から治療する薬」ではないことです。しくみ的には症状を抑える薬であり、飲むのをやめるとまた症状がでてくるという性質のものです。でも、量を減らしたり、休薬期間を設けたり、ということはできるかもしれません。また、よくわからないけれど、中止したまま治ってしまうようなケースもでてくるかもしれません。
まだ円形脱毛症に使われるようになってから日が浅く、データも少ないので、先生たちも試行錯誤の状態なのではないかと思います。
オルミエントの効き目について
脱毛面積が50%以上から20%以下まで減った患者さんの割合を調べたデータがあります。
オルミエント4mgを36週間飲んだ群は35.2%(281人中99人)、
プラセボ群は5.3%(189人中10人)

オルミエントを約9ヶ月飲んで、発毛しているところが80%以上になるのが10人に3〜4人、
飲まないと100人に5〜6人程度。
この割合を多いとみるか、少ないとみるか‥。飲まないより効き目はあるけど、10人に3〜4人か。
ちょっと微妙なところもありますが、飲んでみないとわからないところはどうしてもあります。

オルミエントで多数治療されている先生が統計をとったところ、日本人は、公表されているデータより少し成績がいいそうです。
オルミエントの費用
オルミエント(4mg)は1錠で5274.9円(10割)もします。

ちなみにこれにプラスされる消費税分の10%は薬局持ちで、患者さんは支払っていません。
小さい薬局が在庫を抱えるのは大変!最近の薬は高すぎるよ‥
‥すみません、愚痴でした。
気を取り直して‥(⌒▽⌒)。
支払いがある程度高額になった場合、高額療養費制度というものが使える場合があります。支払いの上限の額は、年齢や年収の区分によって分けられています。上限を超えた医療費が年に3回以上続いた時は、さらに減額されます。

とてもありがたい制度だと思います。
オルミエント(4mg)84日分は自費では約45万。
保険で3割になり、窓口での支払いは約14万。
高額療養費適応で窓口での支払いは約8万。
高額療養費適応が1年間に3回続くと、4回目からは44,400円。

2024年4月からは薬の値段が少し下がったので、
保険で3割の場合、12万円弱くらいになりました。

費用と効き目、やってみたい気持ちなどをよく検討してみてください。
お医者さん選びも重要だと思います。



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